恋猫
「でも、来てくれたから、許して上げる」
「鰯の煮付けを召し上がれ」
鈴が美化の前に鰯の煮付けを差し出した。
美化が鰯を旨そうに頬張っている。
「美化、あれからどうだった?」
鈴が興味の核心に迫った。
(何が)
美化がきょとんとした顔をしている。
「淳ノ介さまよ。私の事は、何か言ってなかった。
(何だ。淳ノ介の事か。くだらねえ)
美化は、惚けた顔をして鰯の煮付けに舌包みを打っている。
(これは、旨い。第一、新鮮だ。鰯の油がじわ~と載っている。旨いねえ。さすが、大店(おおだな)。出すものが違うねえ)
美化は鈴の話を聞くより、鰯に夢中になっている。