恋猫

 「美化、よろしくね」


 鈴が美化の後ろ姿に声を掛けた。


 「きっとよ。分かった。返事待っているからね」


 鈴の声が、なおも美化を追っ掛けて来た。
 美化は知らん振りをした。


 美化は意地でも振り返らなかった。というより、振り返りたくなかった。
 Why?


 雌猫のプライドか。うるさいんだよ。
 嫉妬か。しゃらくせえ。
 意地悪か。そこんとこ、ちと近い。


 のしのし庭まで歩くと、そこからひょいと塀によじ登り、美化はそのまま振り返る事無く姿を晦ました。


 美化は通りに出ると、楓家の屋敷まで全速力で駆けて行った。






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