マスカレードに誘われて
「ほら、もっと肩の力を抜いて」
「そう言われても……」
「焦ったら駄目だよ。落ち着いて、落ち着いて……」
ロイの言葉は、不思議と彼女の心に沁みてくる。
イヴは肩の力を抜き、目を閉じた。
徐々に、二人の足取りが揃ってくる。
「その調子だよ、イヴ」
ロイが楽しそうに笑う。
一曲躍り終えると、イヴの要望で二人はテラスへ出た。
時が過ぎるうちに、雲が月を覆い隠してしまったようだ。
幽かな光が、雲の間から漏れてくる。
そよそよと風が吹き、湖が波打つ。
「気持ちいいね」
「……そうね」
「イヴ?どうしたの?」
仮面の上からでも分かる、不安そうな顔。
彼女は湖面を見つめながら、おもむろに訊いた。