The world is changed story
「ありがと、クラルテ。
私、ほんとに、自分が死んじゃうんじゃないかって、すごく、怖かった、」
あの感情、感覚を思い出して、涙がまたあふれそうになる。
でも、掌に伝わるクラルテの温もりと、ちゃんと目に映る笑顔がある。
それだけで違う涙が出て来て、悲しい涙をかき消してくれる。
昔、私がまだ小さかった時、お母さんに話してもらったお話。
お父さんと出会って、恋をして、
宝物みたいな日々の中で私が生まれたんだって。
いつか私も恋をしてみたいって思った。
こんな夢も希望もないような世界でも、幸せなんていくらでもあるんだ。
「大丈夫、デイムは生きてる。
でも、まだ体の毒気は抜けきってないって先生も言ってたから、
もうすこしゆっくり休んだほうがいい。」
そう言われて、少しの不安がまた襲ってきた。
このまま手を離して、また眠ってしまったら…、
今度こそ自分は二度と目覚めることができないのではないか、と。
それでも、そんな自分の不安をクラルテに話すことなんてできなかった。
知り合って長くもない、
まだ完全に心を開くこともできていない、
そんな相手にここまで世話になっておいて、
そしてさらにすがることなどできない。
「ん…、少し眠ります。ありがとう。」
そう一言だけ言って、クラルテが部屋から出るのを確認もせず、
私は目を閉じた。