似非恋愛 +えせらぶ+

「そ、そっか。由宇、おめでとう」
「ありがとう、香璃」

 私は横目で斗真を見て、後悔した。

 好きな人が、泣きそうに顔を歪めて、笑っていたから。

「……由宇、おめでとう!」

 絞り出すように、震える声で、斗真が叫んだ。

「うん、ありがとう」
「じゃ、俺、帰るわ」

 唐突に斗真は立ち上がり、帰ってしまった。その様子に由宇は首をかしげる。

「……どうしたんだろうね」
「うん……」

 本当は知っている。気づいていないのは当の由宇だけ。

 由宇は高校生の頃からずっとジョージさんのことが好きで、ジョージさんのことだけを見てきた。
 ずっと片思いで、それでもずっと好きだったジョージさんと付き合うことになってからますます、由宇の眼にはジョージさんしか映ってなかった。

 そんな由宇を、斗真はずっと好きだったんだ。
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