似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
「ん……」
思い切り背伸びをして、私は寝返りを打った。すると、私のものじゃない温もりに触れる。
いつものように、私はその温もりに腕をからめた。
「真治……」
「真治、じゃねえよ」
聞き慣れない声が寝起きの耳に届き、私はびくりと身体を震わせ、恐る恐る寝ぼけ眼を開いた。
面白そうに私を見ていたのは、蒼い瞳。
「え!?」
と、と、斗真!?
「な、なんで、な?」
一気に覚醒した私は、思わず自分の服を確認するけど、ちゃんと着ている。
「落ち着けよ」
あくびをしながら斗真が身を起こした。竜胆では暗がりでよくわからなかったけど、アンバー色の髪の毛も昔から変わってない。
でもやっぱり、斗真は私の知ってる斗真じゃなくなっていた。
ちょっぴり広くなった肩幅に、厚い胸板。覗く鎖骨から漂う男の色香に、私の胸が高鳴ってしまう。
「な、なんで……ここ、どこ?」
「俺の部屋。昨日、お前酔いつぶれたから連れてきた。うち近かったし」
斗真が、ふっと微笑んで私の頭に触れた。