似非恋愛 +えせらぶ+
「で、真治ってお前の元彼?」
蒼い瞳に見つめられ、私は息を呑む。
触れられたくない傷に、塩を塗られた気分になった。
「……そうよ」
私は目を伏せた。
「ふうん、で、振られた?」
「そう。振られたの。私と暮らしている部屋に、別の女連れ込んでた。私は……! 結婚も考えてたの……にっ」
胸が、痛くてたまらない。
悔しい。
苦しい。
悲しい。
寂しい。
爆発したみたいに、一気に感情があふれ出た。
次の瞬間、私は斗真の腕の中にいた。わけがわからず、混乱する。
「俺が慰めてやろうか」
は?
「ちょ、意味わからないっ」
私は斗真を押し返すけれども、体格差はどうしようもなく、びくともしない。
馬鹿みたいに心臓が鳴って、冷や汗が出る。