似非恋愛 +えせらぶ+

 遠い、遠い昔においてきたはずの感情が、戻ってきそうになる。
 ずっと昔、斗真のことを好きだったころの感情が。

 私は、まだ真治のことをひきずっているというのに。

「付き合ってるふりしてやるよ」

 でも、続いた一言が私の心を凍らせた。

「……え?」

 私は呆然とした顔で斗真を見返した。
 夢から突然醒めたかのように、心が冷えていく。

 一方の斗真の表情からは、何を考えているか窺えない。

「香璃だって大人なんだから、割り切った関係くらい、できるだろ」

 割り切った、関係……。

 斗真の言葉が、馬鹿みたいに右から左に流れていく。

「お前が寂しいとき、俺が一緒にいてやるから、俺が寂しいときはお前も付き合えよ。ちょうどいいだろ、どうせお互い相手いないんだし」

 そこまで聞いて、私は笑った。
 笑うしか、できなかった。

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