似非恋愛 +えせらぶ+
「それなら、また連絡させてもらってもいい? 仕事遅くなることも多いから」
「今は何してるの?」
「IT系の仕事をしてるの」
「忙しそうだねー……」
言いながら、私に物件の資料を手渡す。
「他に、見たい物件も選んでみて」
「ありがとう」
私は何個かよさげなところを探す。こうして見ていると、存外どこも良さそうで、なかなか決められない。
「こういうのって、迷っちゃうよね……」
「そうだよね、写真で見るのと実際に見てみるのとでも結構印象違うしね。内見は絶対した方が良いよ。それに、駅からの経路もちゃんと見ておかないと、女の子の一人暮らしなんだから」
小城君の言葉に、私は思わず笑ってしまう。
「もう女の子って、年じゃないわよ」
小城君はきょとんと私を見た。何の疑いも持ってないような瞳だった。
「女の子はいつまでも女の子だよ」
「……ちゃらい」
「えー、心外」
女の子はいつまでも女の子、か……。
何気ない言葉だけど、なんだか響いた。
いつのまにか大人になってしまった私。
いつのまにかいろんなものを無くしてしまっていた私。
いつのまにか汚れてしまった私は、今でも『女の子』でいられるのだろうか。