似非恋愛 +えせらぶ+

「……へえ?」
「学部も違ったし、ほとんど話すことはなかったんだけどね。今日会っても誰かわからなかったわ。だって、大学時代金髪でカラコンを入れていた人が、黒髪の黒縁メガネで突然目の前に現れてもわからないよね」

 先ほどあった出来事を話していると、斗真が少し真剣な顔で私を見ているのが分かった。

「……どうしたの?」
「あ、いや……」
「何、気になる」

 気になった私は身を乗り出して、斗真の言葉を引き出そうとする。

「いや……香璃、明るくなったな」
「え?」

 そういえば、最近、斗真の前でも素のままでいられる。
 真治との失恋の痛手から、大分快復してきたのかもしれない。ちょっと前の私は、泣いてばかりだった気がする。

 私は笑った。

「斗真が慰めてくれたからよ」

 それくらいの社交辞令を言えるくらいに、私は快復していた。

 斗真が慰めてくれたからだけじゃない。
 過去の想いを告白し、みあや氷田君の想いを聞いて、私は自分がやらなくちゃいけないことと向き合う勇気を持てた。

「……香璃、お前本当に変わった」
「何、惚れた?」

 軽口で、こんなことを言えるくらいになった。大昔の私や、ちょっと前の私では言えなかった言葉だと思った。
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