似非恋愛 +えせらぶ+
「かもな」
斗真の、肯定ともとれる言葉に私の心臓が高鳴る。
「ふふ、冗談」
だけど、それを本気で受け取らないくらいには、大人になったんだ。
「そういえば、香璃」
「うん、なに?」
「どの辺に引っ越すんだ?」
「うーん、会社から近いところを考えてるけど」
その質問に、少しどきりとした。
斗真に甘えないように、会社から近くて斗真のマンションから行きづらい場所を選んでいたのを、見透かされてしまったのかと思った。
今の場所は、うちの会社も斗真の会社もマンションも、全部近すぎる。
「ふうん、どの辺?」
「決まったら教えるわ。早いうちに、仕事終わりにでも内見に行こうと思ってるから」
斗真は何も言わずにコーヒーを飲んでいる。その目からは何を考えているのかは読み取れなかった。
「もう、あいつ……元彼から連絡はないんだな?」
「うん。何やってるんだろうね、興味はないけど」
私は本当に斗真に感謝している。こうして、真治のことを忘れられたのは、私が斗真のことでいっぱいいっぱいになっていたことが大きいのだ。
斗真はふっと口元を緩めた。