似非恋愛 +えせらぶ+

「もう、大丈夫なんだな」
「うん、お蔭様で」

 もしかしたら、もう、この偽物の恋愛関係も必要ないのかもしれないと思ってしまった。そう考えると、胸の奥がきゅっと締め付けられるように痛む。
 今までのように斗真を頼れなくても、大丈夫だろうかと思うのは、甘えないように離れようとしている今の行動と矛盾していると思う。

 でも、寂しいと思ってしまうのは理屈じゃない。

「そういえばさ、斗真の元カノって、どんな人だったの?」

 今まで、自分のことでいっぱいいっぱいで斗真の話を聞く余裕がなかった。斗真も斗真で、あまり話したがらない雰囲気だったせいもあるかもしれない。

「……あー、まあ、普通だよ」
「普通って何? どれくらい付き合ってたの?」

 深堀りする私に、斗真は少しだけ恨めしそうに私を見る。

「え、だってずるいじゃん、斗真は私の元彼にまで会ってるのに、私は全然知らないんだもん」
「1年かな。向こうから告白してきておいて、心変わりしたらさっさと去っていくような女だったよ」
「斗真みたいないい男捨てるなんて、見る目なかったんだね、その人」

 何気なく言った私の言葉に、斗真は目を見張る。

「お前……褒め殺しかよ」

 そっと頭をなでられる。そして、ふっと笑った斗真の笑顔が優しかった。

「ただ褒めただけだよ。で、これからどうするの? ショッピングモールにでも行ってみようかと思ってたんだけど」
「じゃ、そうするか」

 2人して飲み終わった飲み物を返却カウンターに返し、喫茶店を出た。

 そういえば、真治とはこうして出歩くことはほとんどなかったな。
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