似非恋愛 +えせらぶ+

「結構人多いね」
「人気作っぽいな」

 お互い感想を述べて、吹き出す。

「あー、こういうとき、普段仕事ばっかしてるなって実感するわ。どんどん情報に疎くなってく」
「全くだぜ」

 入場時間になって席に着く。場内はほぼ満席だった。

「なんか、ちょっとわくわくする」

 久しぶりの映画に、不思議な高揚を感じ、私は斗真の耳元へ小声で話しかけた。斗真はくすっと笑って、頷いた。

 いくつか広告が流れた後、いよいよ本編が始まった。


 真っ青な空を、凄い勢いで飛んでいる。真っ白な雲が後ろへと流れていく。それはドラゴンだった。風を切るようにドラゴンが飛んで行った先には、深い森の中に城壁に囲まれた国があった。

 そんな冒頭で始まった物語の主人公は、城壁の中の国の王女だった。王である父と、優しい王妃に恵まれ、何不自由なく育った彼女には、幼馴染の騎士がいた。
 幼馴染の騎士には大臣をしている年の離れた兄がいて、皆が仲良く暮らしていた。
 ドラゴンと共に生きる彼らは、美しい世界で平穏に生きていたのだ。

 しかし、その平穏は突如国に襲いくる隣国の兵士達によって破られた。暗黒のドラゴンを率いて軍勢で押し寄せた者たちによって、王と王妃は殺されてしまう。王女は幼馴染の騎士と共に命からがら森へと逃げ出す。その途中、幼馴染の兄が今回の出来事の黒幕だと知ってしまう。実は幼馴染の兄が初恋の相手だった王女は、激しく動揺する。

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