似非恋愛 +えせらぶ+
「そういうこと?」
面白くて、愉快で、涙が出そうになった。
なんだ、そういうことなんだ。
「確かに、すぐにこの寂しさを埋めたくても、彼氏を見つけるのも難しいものね」
「そうだろ?」
私は笑いながら、蒼い瞳を見つめ返した。
斗真の言っていることにも一理あって、うまい話に思えた。
「乗ったわ、その話」
私の挑戦的な返答に、斗真は笑って私の頭を撫でた。
「じゃあ、私を家まで送ってよ。あいつと暮らしていた、浮気の現場になった家に帰るのは、未だに憂鬱なの」
「わかった」
こうして斗真と私は、偽物の恋愛関係になった。
私はただ、寂しいときに斗真に慰めてもらえればいい、そんな軽い気持ちでいた。
好きな人ができたら、すぐに斗真との関係を解消すればいい、そう思っていた。