似非恋愛 +えせらぶ+
エンディングロールを最後まで見終わって、私達は立ち上がった。
「凄かったね……!」
「ああ、最近の技術は大したもんだな。たまには映画館に来るのもいいな」
見ているところが同じで、私は笑ってしまう。
「グラフィックも綺麗だったねー」
「うちのエンジニアも負けてられないな」
完全に職業病の会話だ。
それよりも私は、あの王女と幼馴染の関係を見て、羨ましいと思った。幼馴染というかけがえのない存在は、何物にも代えがたく、稀有なものに思えた。
私にとっての斗真はそうであり、斗真にとっての私もそうでありたいと、そう思った。
「まだ何か見てまわる?」
私が斗真を見上げると、斗真は自然に私の腰を引き寄せた。
あまりな自然な動きで、普通のカップルがしているような距離感に、私は驚く。当の斗真は何も動じていない。
「……」
私は、不自然にならないように少し距離を取った。
「俺はもういい。香璃は?」
「……うーん、何か食べよっか」
「お、いいな」
言ってみて初めて気づいた。こうして斗真と2人で外食をするのは初めてだ。私達はその足でレストラン街に向かった。
どこに入ろうか見ていたところに、鉄板焼き屋さんが目に入る。
「あー、お好み焼き食べたい」
「じゃあ、ここにするか」
いざ入ろうとしたその時、私はある人物の姿に気づいて足を止めた。