似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
私の戯言めいたお願いも、斗真は快く引き受けてくれたため、休日にも関わらず、斗真は私に付き合ってきてくれた。
「あー、でも、まさか斗真と再会するなんて想像だにしてなかったわ」
「俺もだよ。で、由宇は元気にしてんのか?」
斗真が、いつか訊くに違いないと思っていた質問をした。
「元気にしてると思うわよ。私も一人暮らしを始めたから、滅多に会わないけどね。何、まだ好きなの?」
私のさりげない質問に、斗真が私を見る。
予想外のことを言われた、そんな表情を浮かべて。
「俺が、由宇を?」
「好きだったんでしょ? 由宇の――お姉ちゃんのこと」
斗真は押し黙った。
私は知ってる。
斗真が、私の姉の由宇のことを好きだったこと。
私は斗真のことが好きで、ずっと斗真のことを見ていたから。
斗真が私達の前からいなくなったのは、由宇が学生結婚してすぐのことだった。
まるで、逃げるように、突然いなくなったのは。