似非恋愛 +えせらぶ+

「斗真」

 声をかけると、斗真の瞳が私を捉えて、斗真はスマホを片付けた。片手をあげて挨拶してくる。
 その姿があまりに自然で、なぜか切なくなった。

「ごめんね、いきなり」
「いや、かまわない」

 答えた斗真が、ふっと笑って私の頭をなでる。私は驚いてその手を払った。

「ちょっと、子ども扱いしないでよ!」
「子供みたいなもんだろ、会いたい、なんて」

 この真っ赤に染まった顔が、暗闇で気づかれていないことを祈った。馬鹿みたいに顔が熱い。きっと真っ赤に染まっているに違いない。
 それに、良く考えなくても、まだここはオフィスが入っている建物の前だ。同僚に見られていないことを心の底から、切に祈った。

「行こう、斗真」
「ああ」

 その場から逃げるように、私は斗真の腕を引いた。

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