似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
付き合っているふりを始めてから、初めて斗真から呼び出しを受けた。迷いながらも、斗真のマンションに来てしまった私は、かなり単純のようだ。
先ほど逃げ出してしまった手前、気まずいという気持ちもある。真治との再会があった手前、心が落ち着かない。
それでも、斗真に会いたかった。
エントランスでオートロックを開けてもらい中に入ったものの、部屋の前で足がすくむ。インターホンを押すこともできず、固まってしまった。
すると突然、扉が開いて斗真が顔を出した。
「香璃?」
「え、え?」
呼び鈴を鳴らしていないのに、どうして?
「もうすぐ来るころかと思った」
斗真が目を細めて笑った。仕事終わりのスーツ姿じゃなくて、ラフな部屋着。斗真がぽんっと私の頭に手を置いて微笑む。