ちよちよみちよ



「うわああああ!」

振り返ると見知らぬオヤジが僕の自転車につかまっていた。
な、な、なんだ!?
よく見ると、オヤジは口をパクパクさせてしきりに何か喋っている。
あ、音楽が大きくて聞こえなかったや。

「そ、それ、その、ペットボトル、ちょっと……貸して」

イヤホンを外すと、音楽の代わりにオヤジの弱々しい声が聞こえてきた。ペットボトルを持つ僕の手元を、指差している。

「こ、こ、これ、すか」

どもる僕。

「うん。あ、僕、怪しいもんじゃないから」

そう言って僕の自転車を掴んだまま、汚ならしい口ひげをグイッと上げて笑うオヤジ。
艶々のオールバック、額と目尻には深い皺、濃い眉毛がダラリと下がっていて、なんだか人は良さそうだけど……いやいやいや、やっぱり十分怪しいでしょ!

「砂場でね、トンネルを作ったんだ。川も作ったから、水を流したいんだけど、あいにく僕、一万円札しか持ってなくて。そこのゴミ箱、さっき浮浪者が来て、空き缶とかみんな持って行っちゃってさ……」

砂場? トンネル?
もしかしてこのオヤジ、さっき千代が言ってた『マジキモいおじさん』か?


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