ちよちよみちよ
「あ、はい。いっすよ」
僕は手に持っていたペットボトルをオヤジに差し出す。それを受け取り、嬉しそうに笑うオヤジ。このオヤジ、やっぱり千代が言ってた『マジキモいおじさん』だな。ヤバいな。さっさと行こう。
オヤジに背を向け、僕が再び自転車を漕ぎ出そうとすると、
「あ、待って、君。それ、そのリズム。『イエロー·ハブ』でしょ? 懐かしいなあ」
僕を引き留め、僕のイヤホンから漏れて流れる音楽に頬を緩めるオヤジ。
「えー、今の若い子でもこんなの聴く子いるんだ。嬉しいなあ。このギターソロ、スッゲー練習したもんなあ、僕」
「イエロー·ハブ……知ってんすか?」
『イエロー·ハブ』は、80年代のジャパニーズロックで、知る人ぞ知るバンドなのだ。このバンドはみちよのお気に入りで、その影響で僕も聴き始めたのだがそれほどメジャーではない。
「知ってるよお。僕、イエロー·ハブのツアーでサブギター入ったこともあるし、アルバムも参加してるし」
「え!?」
おいおいおい。冗談だろ。大体、そんなすごいギタリストが、こんな公園の砂場で遊んだりしないし。