ちよちよみちよ



それから僕は時々、千代を送ったついでに公園へ寄った。
自称ギタリストのオヤジは、三日に一回くらいは公園に現れた。砂場にしゃがんでいることもあったし、ベンチに座っていることもあった。僕の姿を見つけると、オヤジは嬉しそうに手を振った。僕もそれに応えてお辞儀をする。

何度目かのそんな夜に、僕はスポーツドリンクを一本買い、自転車を公園の脇に止めると、砂場にしゃがむオヤジへと歩み寄った。やっぱり僕はオヤジのギタリスト話に興味があったのだ。

「お、来たね」

僕を見て、やっぱり嬉しそうに笑うオヤジ。

「あのー、おじさん、名前、何ていうんすか」

「え? 僕? コウイチ。幸せ一番で、幸一」

僕はイエロー·ハブのCDジャケットのギタリストメンバーをチェックしてきていた。確かに、この間聴いていたセカンドアルバムの中には、『菅井幸一』というギタリストの名前があった。

「菅井……幸一さん?」

「そうそう、菅井幸一。君、調べてきたんだね」

オヤジ、もとい幸一さんは、僕を見上げて人懐こい笑顔を見せた。その笑顔は近くで見ると、いつかテレビで見た、年老いた盲導犬に似ている。


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