ちよちよみちよ
「タケイチ君かあ。じゃあ僕達、コウちゃんタケちゃんだね。仲良くしよう」
「……」
何がじゃあなのかもよくわからないし、『コウちゃんタケちゃん』なんて売れない漫才師みたいでちょっと笑えなかった。
「タケイチくん、高校生? 夏休みでしょう。デートする彼女もいないと見た。僕と一緒だね」
ずいぶん失礼な人だ。いや、言ってることは間違ってはいないのだけれど。
「幸一さんは、何でこんなとこにいるんすか」
「僕? 実はこの辺りにねえ、僕の好きだった人が住んでるんだよね。ついつい、思い出しちゃって」
幸一さんは煙草に火をつけた。またオイルの匂いが流れてくる。
好きだった人? まさかのストーキングか?
「でも、当時はね、全然相手にしてもらえなくてね。きれいな子だったからな。それでも僕は尽くしてね。尽くして尽くして、尽くしまくったよね」
何だか他人事とは思えない話だった。僕は持っていたスポーツドリンクの蓋をこじ開け、幸一さんの隣にしゃがみこんだ。
隣で見ると、街頭に照らされた幸一さんの口ひげは綺麗に切り揃えられている。そこに煙草の白い煙がモクモクと巻き上がった。