ちよちよみちよ
「気がついたらね、もう何年もその子に夢中だったのね、僕。その子のためなら、何だってしたんだよ。タケイチ君は、そんな女の子、いる? 僕はね、今その子はどうしてるかなって、時々ね、ここで考えちゃうんだ」
これは、僕に対する神様の啓示だろうか。なんという偶然だろう。幸一さんは、僕と同じ境遇にいたのだ。
「それで」
「ん?」
「それで、その子とはどうなったんすか? うまくいったんすか?」
てか、ヤれたんすか?
さすがにそうは聞けないけど。
「僕はね、その時、大学生だったけど、大学を出たらこの町を出ることにしてたんだよ。ギタリストになる夢がね、あったからね。彼女にもね、もう会えなくなるって言ったんだよ。僕はもう、君に尽くしてあげられなくなるってね」
幸一さんは懐かしそうに、視線を真っ暗な夜空へと向けた。残念ながら、見上げた空には星ひとつない。ドラマにはならないシチュエーションだった。
「そうしたらね、彼女、しょんぼりしたんだよ。びっくりしたよね。悲しそうな顔をしたんだ。そしてね、とうとう、奇跡が起きたんだよ」