巫女と王子と精霊の本
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「エルシス王、来てくれたか」
マニル国の国王、ゼブレード・マニル国王が笑顔で手招きをしている。
「ゼブレード王、お待たせしましたか?」
馬から降り、二人で教会を見上げる。
「今来たところだ、気にすることはない。にしても…立派だのう…」
「ええ、本当に…」
思わず溜め息が出てしまうほどの美しさだった。
白銀の外装に黄金の十字架、カイン国とマニル国の国境に建つこのレルティア教会はきっと多くの生き物達の心を救うだろう…
「これが、国境を越えあらゆる生きとしいけるもの達の出会いを、交流を広げてゆけたらよいな……」
「絶対に、叶いますよ」
いつか、誰もが手を取り合い、争いでなく言葉でわかりあっていけるように、今は多くの人々が言葉を交わす機会を作るべきなんだ。
「おや、エルシス国王。それはリコリスの花かね?」
ゼブレード国王に見つかり、俺は恥ずかしくなる。
何を願うのかなんて聞かれたら、子供だと笑われるに違いない。
ただでさえ、俺は王になるには若すぎる。今年20になったばかりだ。
そういえばあいつは……19になった頃か?いや、そもそも同じ時を生きているのかも疑問だ。
あいつの世界とは、流れる時間も違うのだろうか……
「エルシス国王、考え事か?」
「あ、いえ……」
「しかし、エルシス国王も願い事をするとは……叶うとよいな」
ゼブレード国王のからかうような言い方に、俺は恥ずかしくなる。
「いや、なに私の願いでもあるのだよ。エルシス国王の願いはおそらく…アルサティアに生きるものの多くの願いであろうな」
「ゼブレード国王……そうですね…」
鈴奈、お前はこんなに必要とされている。孤独になってしまうというのならここで生きればいい。
俺なら……お前を孤独になどしないのに…
「さぁ、行ってきたらいい。視察なら私一人でも出来る。終わったら戻ってきてくれ」
ゼブレード国王の言葉に甘え、教会へと向かった。