とある神官の話




 どうしてこうなった。




 腕を引かれて走る中、すでに私は限界に近い。背後に迫る"何か"は執拗に追ってくる。
 そして「しつこい連中だ」と優雅に言う男の声には乱れがない。走っているにも関わらずだ。普通ならば私のように呼吸が乱れ、言葉も途切れ途切れになるだろう。
 "何か"は恐らく魔物なのだが、影にしか見えない。が、時折人の形になると思ったら攻撃してくる。



 何故こうなったか。



 私は喧嘩を止めたあと、ぐちゃぐちゃとなった辺りの掃除を手伝った。被害は意外に広く、時間がかかった。

 その喧嘩に巻き込まれたいたミイラ男もまた手伝っていたのだが、不意に手を止めた。そして、夕方近くなった空を見上げて「見つかったか」と小さく言うと、私を引っ張った。

 すると、いきなり樽が割れた。ぎょっとするまわりをよそに、包帯だらけのミイラ男は「すみません。巻き込みますよ」と言うと私を引っ張って走ったのである。
 あっという間のことで、私はミイラ男に連れられるしかなかった。



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