とある神官の話






「人体術でしょうか」

「……私もそう思いますよ。子供を亡くした思いがそれだけ深いんでしょうね」

「そういうものですか」

「ええ」







 自分は、あまりいい思い出がない。親は自分に無関心だったし、抱きしめられたのも記憶にない。

 それは寂しいことなのだろう。親は私を手放し、今頃何をしているのかさえわからない。今となっては無関係だろうし、向こうも覚えていないだろう「エルドレイスさん」


 サボるロマノフ局長にかわり、苦労人であるヒューズ副局長は優しいことで密かに有名である。
 そんな彼と一緒にいると、緊張感から解放される気がした。







「大切なものは、ちゃんと守ってあげて下さいね」






 微笑むヒューズ副局長は紅茶のおかわりを私に注ぎ、傍らに置かれた書類を片付けていく。


 わかっている。
 そう私は思いながら、事件のことを考えていた。










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