とある神官の話
「今でもあの人が、闇に身を堕としたと信じられないのだ」
「……猊下は何と?」
「ブランシェ枢機卿」
間に入ってきた神官に会話が中断される。どうした、と彼がいうと神官が「ご報告致します」と告げた。
ミノアで行方不明であったヨウカハイネン・シュトルハウゼンが無事発見された。
何というかあの人は、と思いながら聞いていると、まだシエナたちは戻らないようなことを神官は報告した。
―報告を終えて去っていく神官を見送りながら「猊下は」
「何も言わなかった」
「そう、ですか」
その二十年ほど前から、厄介な事件が増えたといってもよかった。何故。恐らく彼―――アガレス・リッヒィンデルを知る者は何度も問うたことだろう。
私も、わからない。
今出来ることをやるだけ。ただ、それだけだ。
* * *