とある神官の話




「今でもあの人が、闇に身を堕としたと信じられないのだ」

「……猊下は何と?」

「ブランシェ枢機卿」




 間に入ってきた神官に会話が中断される。どうした、と彼がいうと神官が「ご報告致します」と告げた。

 ミノアで行方不明であったヨウカハイネン・シュトルハウゼンが無事発見された。

 何というかあの人は、と思いながら聞いていると、まだシエナたちは戻らないようなことを神官は報告した。
 ―報告を終えて去っていく神官を見送りながら「猊下は」





「何も言わなかった」

「そう、ですか」




 その二十年ほど前から、厄介な事件が増えたといってもよかった。何故。恐らく彼―――アガレス・リッヒィンデルを知る者は何度も問うたことだろう。

 私も、わからない。


 今出来ることをやるだけ。ただ、それだけだ。





  * * *



< 116 / 796 >

この作品をシェア

pagetop