とある神官の話





「人?」

「ええ。私を誰かと間違えているのか何なのかわかりませんが、同族だとわかったとたん攻撃と追っ掛けが始まって」

「で、行方不明ってなったのか」

「みたいですねえ。彼はヴァンパイアのつもりで、人を襲う。だが"器"はそうじゃない。吸血しようとしてもその衝動が満たされることはないのですが」






 吸血の被害に遭った人たちは、吸血されたのみである。死人が出てないだけ、前の事件よりはましなのだろう。

 行方不明のままにしていたのは、追いかけられるのが自分のみのほうが都合よいから。そんな理由だったらしい。
 





「貴方がくたばるような人には見えないから心配はあまりしてなかったんだが」

「いやあ。いい経験をしましたよ。途中棺桶に入っていたのをうっかり神官に見られて誤解されたりして」




 何してんだこの人。

 ははは、と笑うハイネン。どうりでハイネンを見つけた神官が青い顔をしていたわけだ。
 どっと疲れが出る。




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