とある神官の話




「ハナタレエドゥアールが教皇となってから、また随分平和になったものですがねえ。まだ鼠がうろついている」

「……」




 "あの"教皇をハナタレ呼ばわりできるのが凄い。生きている年数が違うとまあ不思議だ。

 そういえば、と俺は思い出す。
 エドガー・ジャンネスと同じく、彼もまた何故"神官"のままなのか。ジャンネスは「上は面倒」などと言っていたが、ハイネンは何故?「気になりますか?」

 見透かされているような気がした。





「私は"知りたくて"神官のままでいるんですよ」

「それはどういうことだ?」

「――――真実と言われたものが真実だとは限らぬ」





 ふっと目を細めた。



 黙っていれば、さすがヴァンパイアだけのことはある。ぞっとするほど美形だ「とか言うじゃないですか」が、もう喋るなお前、と言いたい。

 ゼノンといいハイネンといい、シエナがろくな人がいない!と嘆くのも頷けた。はっきりいって、ゼノンもわからないがハイネンのほうはもっとわからない。




< 124 / 796 >

この作品をシェア

pagetop