とある神官の話


 村に術をかけたのち、夜は交代での見張りをすることにした。あの術は一晩はもつだろう。だが万が一ということもあった。
 聖都に連絡をとり、ランジットが来ることとなっている「あれは」


 村に術をかけている私は、今夜は眠れない。それにたった今、夜の交代から戻ってきたムブラスキ神官が紅茶をいれてくれた。それを受け取り、続きを言う。




「もしかしたら、なのですが」

「ええ」

「獣人ではないかと」




 異能持ちの種類の一つ。自分の意思で己の姿を獣に変えることが出来る、というものだ。人狼などというのもそれに入るとされる。
 何故? 私は彼に聞き返した。



「村の住人が、"喋った"と言っていたんです。気のせいかも知れないからと報告書には書かなかったと」





 成る程な。
 獣人は異能持ちの中の、一つの種類だ。姿を獣に変えることが出来る。姿を変えても人のように言葉を話すことが出来るのだが――――。

 あの獣が雪を?

 わからない。季節は深まる。あまり時間はない。"本来の雪がふる"までにどうにかしなくては。





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