とある神官の話




 なにを言っている?

 赤髪は笑った。じゃあね、と煙のように消えた。残った中年はこちらを見た。そして「もうすぐだ……」と呟き、出ていった。何がもうすぐなんだ?

 ここは何処だろう。自分は?

 真下に描かれた不気味な文様が纏わり付くように思えた。床は冷たい。吐息は白い。が、自分はあまり寒いと感じない。「あ」声を出した先に、剣があった。側には短剣。頭が痛い。頭が――――。





  * * *





 ドアを開けると「あだっ」という声がした。ドアから外を覗くと、ドアに手前がかかる。黒い外套のあちこちに雪がついて模様を作っていた。
 どうやら顔面直撃したらしい。寒さでやや顔を赤くしたランジットが鼻を摩りながら「よお」と言う。それにああと返しながら、外に出た。相変わらずこの村だけに雪が降っている。




「見事に村だけなんだな」

「ええ」

「お前、休んでおけよ」

「うるさいですよランジット」

「八つ当たりか、おい」





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