とある神官の話



 雪掻きがされた道に並ぶ。村人の姿がちらほら見え、見回りの神官も見えた。やや遠くでムブラスキが見える。
 夜通しだったと話せば、ランジットはだろうなと返す。村に入るさいに術があったからと。
 すでに報告を受けているランジットは武装していた。外套も、中に着ているボディースーツもややいつもと違う。冬物だからか。だが、派手にくしゃみをし「あーさむさむ」と漏らす姿は何というか頼りなく見える。
 あ、とランジットが漏らす。




「そういやシエナさんが」

「シエナさんが!?」




 詰め寄ったランジットの顔が引き攣る。声も大きかったらしく、神官がこちらを見た。片手をあげて何でもない、とごまかす。シエナが何なんだ。
 ミノアから帰ってきたシエナと入れ違いのごとくやってきたのだ。ああシエナさん……。




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