とある神官の話



 わかっている。

 ふいに思い出した。不愉快。ああ不愉快だ。シエナさんに会えないし仕事はこんなのばかりだ。嫌になる。
 集中だ。集中しろ。光。闇を討ち滅ぼす光。恐れるな。
 はたから見たら、何をしているのかわからないだろう。だが、今術を破壊しようてしている。空気が変わる、と異能持ちではないランジットはそう言っていた。わからないが、そんな感じだと。「抜けた!」指先からずぶずぶと入り込む。それは侵食。ワタシノモノダ。ワタシガシハイシテヤロウ。


 弾ける!



 それはステンドグラスのように、弾けて割れた。違うのは破片が降ってくるように見えるだけで、破片などない。
 出遅れたランジットをおいて、私は続けて腕をあげる、光の槍。ランス。悪のみを貫く刃を、放つ!だが獣人は咆哮をあげ「ジャ×を、スルな!」と声を発し、避けた。

 槍はムブラスキ神官の近くに刺さる。そして、大破壊。

 無理矢理侵入するために外部の術を破り、内部で発動しかける術をメッタ斬りのごとくそれは猛威を振るう。獣人は避ける。避けて避けて、それでも避けきれない攻撃が皮膚を裂く。
 あちこちで気絶している神官や村人を見ながら進み、「まずい!」という声がした。ムブラスキ神官?いや、違う。





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