とある神官の話




 すみませんが一口いただけませんか、と私が持つマグを指差す。顔は真面目。私は仕方ないと手渡す。

 てっきり担当だから、あれこれ動いているのだと思っていたのだが。
 私は「もしかして間接」云々言う言葉を遮る。







「じゃあ何故?」





 まさか、サボり?
 いやまさかそんな。ロマノフ局長じゃないんだから。

 ゼノンは確かに少々あれだが、仕事はきちんとこなすことは知っている。だからこそ弟子にして下さい!と言う見習い神官も多い。







「そうだ、シエナさん。このあと時間ありますか」






 時間?

 自分の用事は無いはず。任務も入っていない。だから買い物にでも行こうかと思っていたのだが。






「え、ええまあ」

「なら、少し付き合って下さい」

「え、ちょ!」





 サンドイッチのゴミを持ち、くずかごへ。先に歩くゼノンが振り返り「さあ」と。

 仕方ない。

 これは上司命令?いや、そう思うことにしよう。私はマグを鞄にしまい、追い掛ける。






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