とある神官の話
追いついたランジットが神官を背負ったまま「誰だ?」という。それはこっちが聞きたい。
一方の男は「体中痛えな」といいながら、雪の上に倒れているムブラスキ神官の側に寄った。そして、ぺしぺしと頬を叩く。あちこちで術が切れたことによって、目覚めた人たちが何があった、と話しはじめたときだ。
急にムブラスキ神官が体を起こしたので、男の頭と激突。痛みで再び体を横にした。
「っ貴方という人は!」
「煩えなあお前は」
「嫌な予感がしたんだ。こんなに雪降らして何のつもりだよ!」
「いいじゃねえか、どうせ降るし」
「あの、お二人さん」
あぁ!?
ムブラスキ神官らしからぬ声。はっとした顔をしたかと思うと立ち上がり「も、申し訳ありませんっ」と言った。傷口からは血が垂れたのでふらついたのを、すかさず横にいた男が支えた「で、貴方は?」
「俺は」
「兄さんは黙ってて下さい。双子の兄のヨハンです。エルドレイス神官、あの」
「事情は後で聞きますから」
「すみません」
病人なんだから大人しくしてろよ。煩い。そんな会話をしている二人を見送りながら、これで終わったのか。
何度めかわからない溜息とともに、事情を説明すべく、目覚め状況を飲み込めない神官のもとへ歩く。