とある神官の話
もっと早く。そう憎悪に捕われた娘の父は、娘を呼び戻すために……。たとえ呼び出せたてしても、その結果は見えているというのに。
「村中に娘を喚ぶための術をはりめぐした後、隠すために"これ"を腕にかいて、能力だけ使わせた」
「能力?」
「もともと、雪や氷は得意なんですよ」
「ユキトだからな」
「兄さんの力は水や雪を自在に、私は治癒術の能力持ちなんです」
苦笑したレスティと、ヨハンの言葉にああ、と納得した。
"ユキト"とは、聖都からみて北方に住む部族である。雪を得意とされる。どうりで雪の中を軽快に歩いていたわけか。
あの村だけの異常気象は、操られたヨハンの能力らしい。次第に消えるそうだが、季節が季節だ。もしかしたら溶けずにそのまま根雪になるかも知れない。
レスティとヨハン、か。双子だから確かに似ているのだが、こうして話していると双子には見えない。ランジットがそんな感想をいうと「よく言われます」と苦笑。
「ともあれ、解決だな」