とある神官の話
監獄がある。
武装した兵士が並び、強い術を何重にもかけられている監獄。闇に身を染め、心を喰われたものたちもいて、尤も近寄り難い場所といえよう。
そこに一人の神官が書状を見せ、通っていく。黒に近い青の髪を揺らし、服装は黒い外套。
下品な言葉が飛び交うのにも気にせず、奥へと進む。目的は決まっていた。わざわざ頼んで出して貰った書状など、と笑えてしまうのだが。
とある部屋の前で、案内人が止まった。何度か着ているが……。監獄の術をとき、私は入る。外には見張りがついている。能力持ちであっても脱出は難しいだろう「ラッセル」
「老けましたね」
「第一声がそれか、枢機卿殿」
「おや、私は枢機卿ではないですよ」
「なに?断ったのか」
ベッドとトイレ、本くらいしかない部屋に、"彼"はいた。
―――ラッセル・ファムラン。
"あの"事件の関係者とされる者。