とある神官の話



 監獄がある。

 武装した兵士が並び、強い術を何重にもかけられている監獄。闇に身を染め、心を喰われたものたちもいて、尤も近寄り難い場所といえよう。


 そこに一人の神官が書状を見せ、通っていく。黒に近い青の髪を揺らし、服装は黒い外套。

 下品な言葉が飛び交うのにも気にせず、奥へと進む。目的は決まっていた。わざわざ頼んで出して貰った書状など、と笑えてしまうのだが。
 

 とある部屋の前で、案内人が止まった。何度か着ているが……。監獄の術をとき、私は入る。外には見張りがついている。能力持ちであっても脱出は難しいだろう「ラッセル」




「老けましたね」

「第一声がそれか、枢機卿殿」

「おや、私は枢機卿ではないですよ」

「なに?断ったのか」




 ベッドとトイレ、本くらいしかない部屋に、"彼"はいた。


 ―――ラッセル・ファムラン。

 "あの"事件の関係者とされる者。



< 175 / 796 >

この作品をシェア

pagetop