とある神官の話


 意外そうな声を発したラッセルに、私は苦笑を漏らす。変わらないな、というラッセルとひしと抱きしめ会う「健在で何より」




「てっきり枢機卿になったかと思ったが?」

「身動き取れないなら誰が引き受けるかばーか、といってやりましたよ」

「お前らしいな」




 長いこと生きている、という実感がないわけでもなかった。むしろある。自分が生まれて物心がつき、はじめて会った人間なんかはすでに亡い。

 なじられたこともあったな、とふいに思い出す「私が」
 うん?と返すラッセル。




「私が枢機卿になるか、私の友が枢機卿となるか。ともあれ貴方を出すつもりでいるのは変わりませんよ」

「ずいぶん無謀なことだな」




 そうだ。
 この目。彼とはじめてあったとき、生意気なくそガキだった。異能を持っていたがその力だけに頼らず、日々隠れて人一倍努力する男。
 アガレスにもよく手合わせしてくれとくっついていた。

 確かに無謀かもしれない。
 アガレスが多数の神官を殺害した事件に関わった者として、ラッセル・ファムランが投獄されて約二十年。
 無実を訴えたが、彼は投獄された。あれ程悔しいものはなかった。彼は無実だ。無実なのだ。
 



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