とある神官の話



 むしり取った休暇はまだ何日かあった。世間ではこの時期のイベント向けの飾りがちらほらとされるようになった。孤児院でも先日ツリーを出したばかりだ。
 聞けば、ノーリッシュブルグは降り始めた雪がもうかなり積もっているという。聖都だってちらほら降り始めたのだから普通か。マフラーや手袋を身につけ、私は買い物帰りだった。



 同僚が「シエナは今年どうするの?」と言ってきたことに、私は「孤児院かな」と答えたら、相手がにやついた。理由は「エルドレイス神官と一緒じゃないの?」というもの。もちろん否定した。

 そういえばランジットがノータムという村に向かってから、どうなったのか。ゼノンもいるということだったのだが。




「あ」




 店から出てきた男。それはあの変人……ヨウカハイネン・シュトルハイゼンだった。漆黒のコートを着ていた。今日は包帯男ではないらしい。




「やあ、奇遇ですね。買い物ですか」

「ええ。せっかくむしり…頂いた休暇なので」



 抱えていた荷物をやや傾けながら笑う。ハイネンと会うのがやや久しぶりに思えた。



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