とある神官の話



「それはよかった」




 ふっと笑うハイネン。
 ミノアの事件から知り合いとなったのだが、こう、黙っていると美しい青年にしかみえない。
 思わずどきりとするような笑み。そんじょそこらの青年が笑ってもこうはならないだろう「そうだ」




「つい先程、ゼノン達が戻ったようですよ」

「そうなんですか」

「会いに行っては?ああ、逆に向こうか来そうですね」




 デートしていましたとでも言いましょうか。そんなことを言いにやにやと笑うハイネンを殴りたくなった。いかんいかん。相手は先輩なのだ。
 落ち着け自分と言い聞かせる私に「修羅場も中々」と言うもんだからぎょっとする。この人、今までどんな人生を歩んできたんだ。
 じと目で見ている私に「まあ」




「いいことですよ。誰かに、想われるのは」




 ちらつく雪に美しい笑み。でも、どこか悲しげに見えた。
 貴方にはいないんですか。いますよ、貴方とか。

 やはり彼は読めない。わからない。

 雪の踏み締めるような音。続けて「み、見つけ、ま、したよ!シュトルハイゼン神官」という神官の声。見つかっちゃいましたか、と悪びれる様子もない彼に神官が引っ張っていく。




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