とある神官の話
「ではまた!ってちょ、痛いんですが」
「貴方がふらふらするからでしょう全く」
神官に引っ張られていくハイネンに呆れながらも、私は片手をあげて返す。
ゼノンさんが、か。
今日は早く帰ろう。
私は足早にそこから立ち去った。
* * *
――――ノーリッシュブルグ。
雪がしんしんと降り始め、街を真っ白に染める。街では除雪作業をする人々が見え、子供たちはその横をにぎやかな声をあげて走り抜けた。
そんな光景を抜け、ノーリッシュブルグの中でも神官がいる建物へ足を踏み入れたのは久しぶりだった。あの人に会うのも。
「久しぶりだな、キース。相変わらず苦労が顔に出ているぞ」
「……お久しぶりです。フォンエルズ枢機卿」
まあ適当に座れ。
そう言われ、趣味の良い椅子に腰掛ける。机にはすでに菓子と紅茶が用意されていた。