とある神官の話
「話は大体聞いている。あのミイラ男からも、な」
「なら」
「アガレスの件と""はたして嘘つきは誰か?"か。後者に関しては予想はつく。お前は焦っているのだろう?何故動かないのかと」
約二十年ほど前の事件。彼が動きを見せた。ミノアといいノータムといい、そして神官の中での"何か"。
はっきりいって、フォンエルズ枢機卿の言う通りだ。焦っている。また、あんな惨劇が繰り返されるのかと。
ふん、とフォンエルズは笑う。
「大体、あの事件の当時の枢機卿は殺されるか辞めるか、精神的にいかれるかして数が減った」
「ええ」
「現教皇が許さなかったからだ」
「というと?」
「馬鹿共を残しておいて何になる?はっきりいえば、アガレスは糞野郎どもの大半を殺した。被害者はそれだけじゃないがな」
初耳だ。
調べたことには、と思ってはっとする。あげた視線とフォンエルズ枢機卿とがあって、"ようやくわかったか阿呆"と言われた気がした。
昔。といっても今でもいるが、身を半分闇に染めたような神官が多数いた。異能を持てば、普通とは違う。民間人から見れば脅威であるし、魔物から守ってくれる存在でもあった。
だが。
腐ったやつは何処にでもいる。