とある神官の話


「お前か知っている人物の中で、最も恐ろしいのは現教皇もそうだが」

「………」



 何が面白いのか、低く笑う。




「ハイネン、ジャンネスが一番魔王だろうな」

「前者はともかく、後者は確かにそんな風に呼ばれたことがある噂を耳にしましたが」




 信じられない。
 あんな優しそうな人が? 噂は噂だと思っといたのだが。

 寒気を覚えながら、にたにた顔のフォンエルズ枢機卿が「では」と切り出す。



「久々にやってやろう。胸糞悪い奴らをやっつけてやろうではないか」

「………」




 まるで悪役じゃないか。

 教皇の命で来たのはいいが、ああ本当に自分のまわりにはろくな人物がいない。そう実感してしまった。






  * * *




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