とある神官の話





 聖都に着いて早々、机に置かれたモノに顔を引き攣らせた。それはけばけばしい色であったりそうでなかったりと様々だが、どちらにしろ同じだ。
 この正体は、ジャンネスいわく「心配した女性達からですよ」だそうだ。普段こういうものは貰わないのだが、不在だから押し付けたようなものか。書類を片付けていたジャンネスがくしゃみをした「風邪ですか」




「いやあなに、誰か噂しているんでしょう」

「気をつけて下さいね。また流行っているみたいですから」

「ええ。貴方も」




 このあと自分も休暇だった。机に乱雑する贈り物を鞄に押し込む。さすがにここでは捨てられない。
 結論。孤児院にでも持っていくか。
 ジャンネスには申し訳ないが、と私が話せば「休むのも大丈夫ですよ」と。礼をいって私は部屋を出た。


 聖都も雪が降り始めた。
 鈍い色の空。建物を出るといっきに体に襲う寒さに身をかたくしながら、さて休暇か、と思う。気がつけば街中はイベント向けの装飾があちこちで見られた。

< 184 / 796 >

この作品をシェア

pagetop