とある神官の話
「久しぶりに会ったと思ったら。……ご無事で何よりです」
「ええ。ふふ」
「な、何笑ってるんですか」
「シエナさんに看病して貰えるだなんて……って、痛いですよ」
「痛くしてるんですから当たり前です!」
熱が残る頬をつねったシエナに、私は再び笑う。
怒っているが、本気ではない。つねられた頬も痛くはなかった。
「何ですか」
「好きです」
「ついに頭かわきましたか残念です」
「相変わらず手厳しい」
聖都へ帰還してすぐ。疲れが溜まってたんですね、と上着を畳みながらシエナが言う。
確かにそうかも知れない。
気分は最悪だ。忘れたい過去は必要以上に私に縋り付く。あんなのを覚えていて何になる。
冬は苦手だ。いつも以上に夢見が悪い。最悪だった。どうやら疲れているらしく、シエナにそれ以上何か言うことも億劫となった。
乱れた布団を直し、「じゃあ」と去ろうとする彼女。