とある神官の話



 ―――――いかないで。




 それは多分、反射的だった。

 掴んだ手の熱は自分のものより温い。我ながら呆れる。去る背中に寂しさのようなものを感じた。何を馬鹿な。



「何です、か」



 彼女はそのまま振り返った。驚いたような顔。それはそうだろう。当たり前だ「少しだけ」

 彼女は黙っていた。体をこちらに向け直した。私が掴んだ手を、ゆっくり離す。当たり前といったら当たり前。彼女は私のなんでもない。私も自分のやったことに驚いて引っ込めようとした。
 彼女は近くにある椅子に腰掛ける。そして―――掴んだ。




「っ……」

「仕方ないですね。今回だけですよ」




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