とある神官の話



 だからか。

 シエナにいわゆる"恋"をした自分が、馬鹿みたいになった。馬鹿だ。当時の私なら、今の私を馬鹿だと思うだろう。だが、馬鹿でいい。馬鹿になってしまうのだ。愛。愛か。





「おや、目がさめたかい?」

「ブエナさん」




 控えめなノックのあと、着替えを手にしたブエナがいた。それにシエナももぞりと動く「シエナさん」

 起きないシエナにブエナが笑う。私は肩に手をおき彼女を揺らす。耳元に顔をよせて「起きないと悪戯しますよ」と言って。効果は抜群だった。跳ね起きたシエナが壁まで後退していく。顔は赤かった。





「な、何をするんですか!」

「起こしただけですよ」

「はいはい。いちゃいちゃするのは後だよ」

「ブエナさん!」




 顔を赤くして怒るシエナ。
 着替えられるかい?という言葉に私は頷く。シエナは慌てて外に出ていく。笑みが零れた。
 古いからちょっと、というブエナに礼をいって私は着替える。後で食事運びにくるよ、といってブエナも出ていく。
 孤児院の子供たちは幸せだな、とふいに思う。

 私はまだ熱っぽい体を動かす。





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