とある神官の話


 ランジットが悔しそうに拳を握る。シエナもまた顔色が悪い。

 ヒューズが、死んだ「お、おい」





「離しなさいランジット」

「お前なあ……。そんな状態でなんて無理だぞ」

「ですが他に」




 使えるやつなどいないではないか。

 本音はそうだ。枢機卿なんてたかがしれている。異能持ちならとくに。私は"魔術師"だ。異能の中でも最高能力。使わないでいつ使う?

 ふいに横から進み出たシエナに、両肩を思いっきり押された。そのままシエナを真上に、私はベッドに倒れこんだ「ゼノンさんは」
 あ、と思った。シエナの目は潤んでいた。そのまま潤んだ目から落ちた雫が私にあたる。




「このまま風邪を治して下さい」




 きっ、と睨まれた。体を起こして、やや子供っぽく涙を拭う。
 ランジットが「何かあるかわからないからな」と釘を刺してきた。




「わかりました」

「抜け出そうとするなよ?」




 諦めて私はベッドに沈んだ。何かあったら逐次連絡すると、ランジットは部屋を出ていく。


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