とある神官の話
牢獄から出たばかりらしい、ラッセル・ファムランが呆れた顔をしていた。そしてミスラ側に並ぶキースは青を通り抜けて顔が真っ白となる。
相変わらず苦労しているらしい。
「毒舌大魔王対奇人変人って感じだな」
呑気に懐かしいなと笑うラッセルに、私は目を細める。ミスラもまた同じように理解したらしく頷いた。キースがふらつくのを軽く無視する。
「長かったな。ハイネン」
「ええ。もう少し早く貴方を出してあげたかったのですがねえ」
苦笑したラッセルに、私は抱擁を交わす。続けてミスラへ。昔より痩せた背中を感じては、胸が痛む。
あの事件から二十年近くも牢獄にいたのだ。二十年。普通の人間ならばかなり大きな数字と言えよう。若かったラッセルも今では中年か。
無実だと証明出来たが、その証明が出来た背景が暗い。だが憂いている時間はないのだ。
前に進まなくては。
「まあ、一生出られないか殺されるかだろうと思ってたが」