とある神官の話



「縛られまくりの監獄にいて頭がいかれないだけ、さすがだな」




 ラッセルは異能持ちであり、かなりの制限をなされていた。たいてい闇に堕ちた者は監獄の中で狂ってしまう。監獄の奥はそんな狂った者の声が不気味に響く。

 感心したようなミスラが「まあ暫くは動きずらいだろうが」と言った。




「それより、これからどうするつもりだ?ヤヒアはまた行方をくらましたぞ?」




 セオドラ・ヒューズを殺害し、ヤヒアは行方をくらませた。何が目的だったのか不明だ。

 彼らは聖都の周辺に出没し始めている。目的は聖都にあるのだろうが、何故。ぼんやりとした私は「そうですねぇ」と考える。――――本当はわかっている。

 アガレス以外は闇に堕ちたものとして、殺人鬼というアガレスにくっつくように動いているだけだろう。だがそれだけでも厄介にこしたことはない。
 ヒューズが殺害されたことによって、一部の枢機卿が怯んでいるとキースは言っていた。腰抜けどもめ。




「ミスラにはちょっとのここを任せますよ。私はノーリッシュブルグのほうへ行きます」

「……不吉だな。貴方のその予言めいた言葉はたいていあたる」

「人の倍生きてますから。ほら、今ならキースもついてきますよ?

「人をモノ扱いしないで下さいませんか」



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